この夏、最も多く話をしたネタとなるのがタイトルにある通りのこと。因果関係の勘違いです。陸上競技を中心に走りの指導、講義をする際、この勘違いに関する指摘をまずします。
地面に大きな力を加えると速く走れる
これが最も多い勘違いですね。昔から言われていることですし、データも多く存在しています。速い選手は地面に大きな力を加えているというのは事実。ただ、これが勘違いを生み出しているわけでして、実際には速く走れるようにはなりません。大きな力を加えることは強いブレーキを掛けることにもなるからです。そして大きな力を加えて生じたブレーキは次の動作に使えないとダメなのです。なので、強すぎるブレーキより適度なブレーキにした方が良いわけで。
大きな力でブレーキをかけてストライドを広げる種目といえば走幅跳なわけですが、そうした動作を走りでやらないのは、接地でブレーキが掛かり次の一歩を出せないからです。大きな力を加えられるしストライドを広げられるし、理屈だけで言えば最高の動作のはずなんですけどね。走るという動作は連続した回転動作の繰り返しであり、一歩だけで考えてはダメ、ということです。なお、2000年代の頭に地面に力を加えている選手は速い、というデータを出した研究者が考え方を変えたのが、義足のデータを取るようになってからです。義足の人たちは地面に大きな力を加えていない。というか加えられない。それなのに健常者と呼ばれる人たちと同様のパフォーマンスを発揮している種目があるわけです。そこから考えたのが、地面に大きな力を加えるというのは速度を上げて走るために必要なブレーキであり、速度を高めるためには必要な要因だが、そこを大きくしても意味が無い、ということです。義足の選手は軽い下腿を用いて素早く脚を前へ移動させている、という点が速く走るための要因となっているわけです。この辺りの勘違いは未だに多くの人たちがしてしまっていますが、故障の原因や、最近よく言われる脚が抜ける、という症状につながるので早めに勘違いを正しい認識に変えてくださいね、と思います。速く走るのには回転数です。
ストライドの大きな要因は脚の長さです
因果関係を勘違いしてしまわないように、要因をしっかりと分けて考えると良いと思います。
2018-09-02
2018-07-23
質と量って分けられるものですか?
よく聞く話ではありますが、質と量のどちらが大事かと聞かれたときに、何をもってして質と言うのかがよく分かりません。その人の練習の目的として量が必要であるとなれば、その練習が他人から見て量が多そうに見えたとしても、内容としては質を重視していると言えるかと思います。例えば、陸上競技におきましては質の高い練習と言うと、何故かすぐに「スピードを高めた練習である」という形で理解されることが多いですが、まったくもってそんなことはありません。タラタラと量をこなすことが質になる場合もあるわけです。今の段階に自分にとって必要な練習をしっかりやる。これ以外に強くなる方法は無いわけです。その時に必要なものがとにかく量をこなすことであれば、量をやることで質になる。ですので、これらを分けて考えることはできないはずです。スピードを高めることが必ずしも質の高さではない、となります。
例えば、1500mを4分30で走る人がいて、4分00を切るのを目標としているとします。
4分30→1㎞3分00、400m→72秒
4分00→1㎞2分40、400m→64秒
これを見ると400で8秒速く走り続ける能力が必要となります。となると、まず必要なことは400mを確実に64秒で走ること、次に64秒をキープすること、最後に少し上げて4分を切ること、となります。これを実現するために400mを64秒で走る練習をすることは質の高い練習となるか?と言えば、特になりません。中には68あたりで徹底的に走り込んで身体を作ることで4分を切れるという人もいるでしょう。これは量をある程度こなすことで身体が作られる(身体を作る=細胞を増やす、というのが私のトレーニング立案における観点です)ので、ありえないことではありません。量によって質を生み出すアプローチです。また、スピードをそこまで上げずにインターバルの間隔を短くしたりするという方法もあります。逆に一本一本をしっかりやり、インターバルは長く取るという手法もあるでしょう。これらはどのやり方であっても、4分を切るという目標を実現するために必要であると考えて実施するのであれば、適切な量であり質になると言えるかと思います。こうした話をする時によく言われるのが、「64しか出せないのならばスピードの余裕が無くて絶対に4分は切れない」ということです。まぁそうですね。64しか出せなかったら4分00しか出ないことになります。ですので、64を切れるというのは絶対に必要な点です。しかし、余裕の有無というのは話として違うものがあります。余裕度が大事というのであれば、1500mを速く走れる人は400が速い方がよく、400が速いなら200も速いとなっていき、最終的にはどの種目であれUsain Boltが世界最速の選手になるはずです。ですので、大事な点は、最大スピードを上げることよりも、最大スピードやそれに近いスピードをどれだけ維持できるか、となります。これを見失ってとにかく速いスピードで練習をすることが高い質の練習だ、と勘違いしてしまっている人が多い気はします。1500mで4分を切る程度であれば、60秒くらいで走れれば十分でしょう。それよりも、とにかく64秒で走り続けられる練習を組んでいくのが良いでしょう。それが質として大事な点です。
速いスピードではなく、目標を実現するために必要な負荷が質である、という理解をできれば良いかな、と思います。そして目標を達成したら次の目標タイムをクリアーする質に変えていく。これの繰り返しです。量と質は別物では無く、必要と思われる負荷に達していなければ質が足りていない、と言える。なので、質というのは練習内容を見ただけではよく分からないことがよくある。ということで。無理して高い速度を出していると故障のリスクが高まるだけですからね…
例えば、1500mを4分30で走る人がいて、4分00を切るのを目標としているとします。
4分30→1㎞3分00、400m→72秒
4分00→1㎞2分40、400m→64秒
これを見ると400で8秒速く走り続ける能力が必要となります。となると、まず必要なことは400mを確実に64秒で走ること、次に64秒をキープすること、最後に少し上げて4分を切ること、となります。これを実現するために400mを64秒で走る練習をすることは質の高い練習となるか?と言えば、特になりません。中には68あたりで徹底的に走り込んで身体を作ることで4分を切れるという人もいるでしょう。これは量をある程度こなすことで身体が作られる(身体を作る=細胞を増やす、というのが私のトレーニング立案における観点です)ので、ありえないことではありません。量によって質を生み出すアプローチです。また、スピードをそこまで上げずにインターバルの間隔を短くしたりするという方法もあります。逆に一本一本をしっかりやり、インターバルは長く取るという手法もあるでしょう。これらはどのやり方であっても、4分を切るという目標を実現するために必要であると考えて実施するのであれば、適切な量であり質になると言えるかと思います。こうした話をする時によく言われるのが、「64しか出せないのならばスピードの余裕が無くて絶対に4分は切れない」ということです。まぁそうですね。64しか出せなかったら4分00しか出ないことになります。ですので、64を切れるというのは絶対に必要な点です。しかし、余裕の有無というのは話として違うものがあります。余裕度が大事というのであれば、1500mを速く走れる人は400が速い方がよく、400が速いなら200も速いとなっていき、最終的にはどの種目であれUsain Boltが世界最速の選手になるはずです。ですので、大事な点は、最大スピードを上げることよりも、最大スピードやそれに近いスピードをどれだけ維持できるか、となります。これを見失ってとにかく速いスピードで練習をすることが高い質の練習だ、と勘違いしてしまっている人が多い気はします。1500mで4分を切る程度であれば、60秒くらいで走れれば十分でしょう。それよりも、とにかく64秒で走り続けられる練習を組んでいくのが良いでしょう。それが質として大事な点です。
速いスピードではなく、目標を実現するために必要な負荷が質である、という理解をできれば良いかな、と思います。そして目標を達成したら次の目標タイムをクリアーする質に変えていく。これの繰り返しです。量と質は別物では無く、必要と思われる負荷に達していなければ質が足りていない、と言える。なので、質というのは練習内容を見ただけではよく分からないことがよくある。ということで。無理して高い速度を出していると故障のリスクが高まるだけですからね…
2018-07-20
1学期の振り返りをしましょう
社会人の人たちもご覧になられているかと思われますが、小学校や中学校、高校や大学におきましては夏休みというイベントの時季でございます。そして夏休みに入る日に貰うものといえば通知表。大学生の場合は単位を獲得できたかの確認はもう少し後ですかね。さて、そんな通知表には5段階などで評価がなされているわけでして、テストの結果や提出物の状況、教員との相性などなど、様々な観点によって数値がつけられております。これだけ頑張ったとかの評価というよりは、数値を付ける側からするとこんな感じでした、という評価だと思います。あなたの努力は認められていないから数字が低いんですよ、なんていう言い方もできるかと思います、テストで100点を取っても、他の人も100点を取っていたら、他の部分で差がついてしまうわけで、その差を埋めることで通知表の数値は高くなるのではないでしょうか。学生時代、テストのできは良かったのに通知表に3が並ぶことが多かった私としましては、よく分かりません。そんな通知表の話をしたいのではなく、
これまでの振り返りをしっかりしましょう
というお話です。 テストで点数を取れなくて評価が低いのは納得がいくという場合に、どうしてテストの点が低かったのかを考えて、次に向けてちゃんと対策を練るのは大事です。悪かったことを意識しつつも、次のテストで再び失敗をやらかすことがあるのは、まぁ経験されている人も多いかと思います。さて、この話をアスリートの結果という点で見てみましょう。春シーズンが終わりまして、陸上競技で言えば自己ベストを更新できたかどうか、というのが評価の一つになるかと思います。テストの結果がタイム、テスト前の勉強は普段の練習と置き換えられるでしょう。
勉強しないでテストの結果が良かったことってありますか?
テスト前に勉強してないと言いながら良い点を取れる人っていますけど、あれは授業でしっかりと理解を出来てしまえる人です。もしくはテスト前の5分で公式などを覚える能力がある人です(嘘ついている場合もあるかもしれませんが)。まぁ人それぞれにコツがあるわけです。得意なやり方を見つけることで、勉強の時間を減らすことが可能となる。その結果、あまり努力をしていないように見える、本人も努力はそんなにしてないと感じているけれど良い点につながる。これをトレーニングで考えると、テストで良い点を取るにはどうしたら良いか?というのがまずあります。それに向けて日々の勉強、つまりは練習を行います。大事なのは当然ながら日々の練習です。ではその練習、本当にテストで点数を取れるものになっていますか?数学のテストがあるのに英語の勉強していませんか?目的とする高得点を取るために何をやったらよいか分からず、とりあえず適当に練習をしていたら、それは結果につながりません。英語のテストに向けて理科の内容を覚えても意味は無いですからね。数学と理科で少し役に立つ時があったりしますけど。結果を出すために日々の練習で何をやるか。その練習は本当に結果につながるものなのか。そうした点をしっかりと振り返り、夏の練習を行い、秋につなげられると良いかな、と思います。
遠回しに丁寧な話をしましたが、要するに日々の練習が結果を出すことにつながる意識をしっかり持って、これで大丈夫か?と確認しなおす作業は大事である、ということです。例えば5000mで15分を切りたい場合、3分ペースで走りラストでちょっと上げられれば14分59秒99です。となると、最低ラインは3分のペースで5㎞を確実に走れるような練習です。そうした練習をやっていないで、毎日1㎞4分で20km走って15分を切れるかというと、切れるかもしれないけれど、これができているから切れた、じゃあ次はこのタイムでこの練習が出来たら良さそう、と次につなげることが難しくなります。過去の練習と比べることで練習における目標設定はしやすくなります。上のテストの例で言うならば、小テストなどを途中に挟むことで、どこまでやれているかを確認すると、弱点やできていることが把握できます。そうしてやるべき最低ラインを考え、それを実現するためにどうクリアーするかを考える。こうした繰り返しによって結果につながりやすくなると思われます。タイム設定や本数、つなぎや間をどうするかを何も考えずにやるのではなく、前回はこれでこんな感じだったから、という振り返りは丁寧にやるべきです。
復習をしましょう、過去の反省をしっかりして、次につなげましょう。
これまでの振り返りをしっかりしましょう
というお話です。 テストで点数を取れなくて評価が低いのは納得がいくという場合に、どうしてテストの点が低かったのかを考えて、次に向けてちゃんと対策を練るのは大事です。悪かったことを意識しつつも、次のテストで再び失敗をやらかすことがあるのは、まぁ経験されている人も多いかと思います。さて、この話をアスリートの結果という点で見てみましょう。春シーズンが終わりまして、陸上競技で言えば自己ベストを更新できたかどうか、というのが評価の一つになるかと思います。テストの結果がタイム、テスト前の勉強は普段の練習と置き換えられるでしょう。
勉強しないでテストの結果が良かったことってありますか?
テスト前に勉強してないと言いながら良い点を取れる人っていますけど、あれは授業でしっかりと理解を出来てしまえる人です。もしくはテスト前の5分で公式などを覚える能力がある人です(嘘ついている場合もあるかもしれませんが)。まぁ人それぞれにコツがあるわけです。得意なやり方を見つけることで、勉強の時間を減らすことが可能となる。その結果、あまり努力をしていないように見える、本人も努力はそんなにしてないと感じているけれど良い点につながる。これをトレーニングで考えると、テストで良い点を取るにはどうしたら良いか?というのがまずあります。それに向けて日々の勉強、つまりは練習を行います。大事なのは当然ながら日々の練習です。ではその練習、本当にテストで点数を取れるものになっていますか?数学のテストがあるのに英語の勉強していませんか?目的とする高得点を取るために何をやったらよいか分からず、とりあえず適当に練習をしていたら、それは結果につながりません。英語のテストに向けて理科の内容を覚えても意味は無いですからね。数学と理科で少し役に立つ時があったりしますけど。結果を出すために日々の練習で何をやるか。その練習は本当に結果につながるものなのか。そうした点をしっかりと振り返り、夏の練習を行い、秋につなげられると良いかな、と思います。
遠回しに丁寧な話をしましたが、要するに日々の練習が結果を出すことにつながる意識をしっかり持って、これで大丈夫か?と確認しなおす作業は大事である、ということです。例えば5000mで15分を切りたい場合、3分ペースで走りラストでちょっと上げられれば14分59秒99です。となると、最低ラインは3分のペースで5㎞を確実に走れるような練習です。そうした練習をやっていないで、毎日1㎞4分で20km走って15分を切れるかというと、切れるかもしれないけれど、これができているから切れた、じゃあ次はこのタイムでこの練習が出来たら良さそう、と次につなげることが難しくなります。過去の練習と比べることで練習における目標設定はしやすくなります。上のテストの例で言うならば、小テストなどを途中に挟むことで、どこまでやれているかを確認すると、弱点やできていることが把握できます。そうしてやるべき最低ラインを考え、それを実現するためにどうクリアーするかを考える。こうした繰り返しによって結果につながりやすくなると思われます。タイム設定や本数、つなぎや間をどうするかを何も考えずにやるのではなく、前回はこれでこんな感じだったから、という振り返りは丁寧にやるべきです。
復習をしましょう、過去の反省をしっかりして、次につなげましょう。
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