よく聞く話ではありますが、質と量のどちらが大事かと聞かれたときに、何をもってして質と言うのかがよく分かりません。その人の練習の目的として量が必要であるとなれば、その練習が他人から見て量が多そうに見えたとしても、内容としては質を重視していると言えるかと思います。例えば、陸上競技におきましては質の高い練習と言うと、何故かすぐに「スピードを高めた練習である」という形で理解されることが多いですが、まったくもってそんなことはありません。タラタラと量をこなすことが質になる場合もあるわけです。今の段階に自分にとって必要な練習をしっかりやる。これ以外に強くなる方法は無いわけです。その時に必要なものがとにかく量をこなすことであれば、量をやることで質になる。ですので、これらを分けて考えることはできないはずです。スピードを高めることが必ずしも質の高さではない、となります。
例えば、1500mを4分30で走る人がいて、4分00を切るのを目標としているとします。
4分30→1㎞3分00、400m→72秒
4分00→1㎞2分40、400m→64秒
これを見ると400で8秒速く走り続ける能力が必要となります。となると、まず必要なことは400mを確実に64秒で走ること、次に64秒をキープすること、最後に少し上げて4分を切ること、となります。これを実現するために400mを64秒で走る練習をすることは質の高い練習となるか?と言えば、特になりません。中には68あたりで徹底的に走り込んで身体を作ることで4分を切れるという人もいるでしょう。これは量をある程度こなすことで身体が作られる(身体を作る=細胞を増やす、というのが私のトレーニング立案における観点です)ので、ありえないことではありません。量によって質を生み出すアプローチです。また、スピードをそこまで上げずにインターバルの間隔を短くしたりするという方法もあります。逆に一本一本をしっかりやり、インターバルは長く取るという手法もあるでしょう。これらはどのやり方であっても、4分を切るという目標を実現するために必要であると考えて実施するのであれば、適切な量であり質になると言えるかと思います。こうした話をする時によく言われるのが、「64しか出せないのならばスピードの余裕が無くて絶対に4分は切れない」ということです。まぁそうですね。64しか出せなかったら4分00しか出ないことになります。ですので、64を切れるというのは絶対に必要な点です。しかし、余裕の有無というのは話として違うものがあります。余裕度が大事というのであれば、1500mを速く走れる人は400が速い方がよく、400が速いなら200も速いとなっていき、最終的にはどの種目であれUsain Boltが世界最速の選手になるはずです。ですので、大事な点は、最大スピードを上げることよりも、最大スピードやそれに近いスピードをどれだけ維持できるか、となります。これを見失ってとにかく速いスピードで練習をすることが高い質の練習だ、と勘違いしてしまっている人が多い気はします。1500mで4分を切る程度であれば、60秒くらいで走れれば十分でしょう。それよりも、とにかく64秒で走り続けられる練習を組んでいくのが良いでしょう。それが質として大事な点です。
速いスピードではなく、目標を実現するために必要な負荷が質である、という理解をできれば良いかな、と思います。そして目標を達成したら次の目標タイムをクリアーする質に変えていく。これの繰り返しです。量と質は別物では無く、必要と思われる負荷に達していなければ質が足りていない、と言える。なので、質というのは練習内容を見ただけではよく分からないことがよくある。ということで。無理して高い速度を出していると故障のリスクが高まるだけですからね…
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