Team inspire official: 1月 2020

2020-01-26

マラソンにおけるペースメーカーの意義

長距離を走る時にペースメーカーについていくことでタイムが出やすい、という話はよく聞きますが、それって何でなのか?という点に関する話はあまりないように思います。一定のペースで走ってくれることでリズムを作りやすく、上げ下げも無く無駄なエネルギーを使わないから、というのが主流な理屈かなと思います。もちろんそれもあるでしょうが、自分の目標とするペースの設定の人についていっても、そのペースで走り切れる練習をしていなかったら当然ながらタイムは出ません。ですので、普段の練習で子のペースならばこのタイムで走り切れると思うから設定はこれくらいで、というのを弾き出しつつ、それを出すにはすべてを使い果たさないと無理だから余計なことは一切考えたくない、という場合においては心を無にして、ただ前を追うのが理想になります。この点に関してはマラソンでいうとグリコーゲンの貯蔵の話になります。筋肉・脳・肝臓で主に貯蔵されるわけですが、脳のグリコーゲンが一定以上に減ってしまった時に生じるのがよく30㎞の壁と言われる現象であると指定されています。30㎞の壁が30kmで生じる人は、そこまでに至るペースが速すぎたということ、そしてグリコーゲンを使い過ぎたということが言えます。その中でも脳のグリコーゲンをレース中に考えたりして減らすことを少しでも抑える、とにかく何も考えずに走ることで余らせられると30kmの壁が来にくくなるわけです。

スタミナをアップする脳グリコゲンローディング - 筑波大学
https://www.tsukuba.ac.jp/public/press/120131.pdf

こうした点から考えると、ペースがどうなってるかなどを何も気にせず、ただ前の人についていくだけにすると持てる全ての力を発揮できる、となります。ただ最初の方でも述べたように、設定に見合ったトレーニングができているというのが条件になりますので。設定が速過ぎたりした場合は、ペースメーカーについていくことがむしろ逆効果になり、30㎞をもたずにグリコーゲンが大幅に減ってしまって壁が到来してしまうことになります。なお、対策としてはレース中に高糖質な摂取、とくに果糖が含まれたものが良いと考えられております。ブドウ糖のみの摂取よりは果糖も含まれるものを摂取すべきでしょう。そして、貯蔵量を増やしておくのが効果的ですので、レース中よりもレース前の方が大事です。

2020-01-23

腰が高いと速く走れる?

速く走るためには腰を高くしろ、そういう指導はそこそこ各所で見かけるわけですが、元が明らかに落ちているという場合は問題であると思いますが、そうではないのに高くしろという指導をされているのは何でなのか。そもそもに腰が高いと本当に速く走れるのか。この点に関しては「腰が高いと一歩が広がるので速く走れる」という思い込みがあるのが問題だろうと思われます。ストライドが広がることで速く走れるという単純なことに落とし込んだ結果、ただ一歩を広げようとするわけです。残念ながら、これによって速く走れるようになるかは疑問です。
腰を高くして一歩を広げると何が起こるか?多くの人においては膝が伸び切った状態かほぼ伸びた状態で接地していきます。これは大きなブレーキを生じさせます。またつま先が上がって踵から接地し大きなブレーキを生み出した結果、力を上方向にしてしまい軽くジャンプします。これにより脚の回転が遅くなります。一歩を広げた結果、脚の回転が遅くなるので結果として走るのが遅くなります。また、膝が伸びた状態というのは力を地面に加えるのが難しいため、接地から離地までの間に不安定な状態に置かれます。これを防ぐために体幹を鍛えましょう、なんていう本末転倒な指導をしている光景も見られますが。また、膝関節が伸びていることで走るというよりは競歩のような動作になるので、どう考えても速く走れるフォームにはならないとイメージしてもらえるかと思います。なお、一瞬でのダッシュが必要な野球、サッカーなどの競技においては膝関節が適度に屈曲した状態の方が一瞬で爆発的な力を出せるので合理的です。これを実現するには適度に腰が落ちていると言われる状態が良いでしょう。この姿勢で長い距離を走れるか、となるとまた難しい話になりますが、練習をこなしていくうちに走れるようになる、というのが答えになるのかと思います。以上、腰が高いと速く走れるというのは勘違いだよ、というのを文字にして説明しようと思いましたが、よく分からんな、というので終わりそうな駄文でございました。直接実体験していただくのが手っ取り早いので、メールを頂ければ直接の指導にご対応いたしますので、ご連絡下さい。

参考
https://doi.org/10.5432/jjpehss.KJ00003392100

2020-01-12

2020年の都道府県対抗女子駅伝の雑感

箱根駅伝においてナイキの靴が猛威を振るいましたが、女子、特に中学生や高校生くらいの年齢の選手に関しては、あの靴を使いこなせる選手は多くないと思われますので、ミズノやアシックスでもよろしいかと思います。結局のところ、あのナイキの靴のポイントはどれくらいの圧力を掛けて地面を踏むか、という点が大事でありあるペースにおいて効果が発揮される、では無いと思われますので。自転車選手の皆様におかれましてはパワーメーターを理解されている方が多いと思いますので、あれを使って一定の圧を加えることが大事となります。その一定の圧というのもメーカーの実験において出されている圧力だろうと思われますので、そこは自分でいろいろ試してみるしかないと思います。従来の日本人に多くある、速く走るためにはとにかく地面に力を加える、というのをやってしまうと簡単に脚を壊してくれる靴でもあるようですので、かなり考えて使いこなせるようになる努力をすると、とても効果を発揮してくれます。ただ、筋力が重要となりますので、成長段階の女子選手の皆様におかれましては、使いこなせないのでは、と。それ以外の点において思った点としましては、異常にガリガリな選手がかなり減ったな、という点です。ひと昔前ならばデブとか言われてもっと痩せろ、ベスト体重は身長-110kgだ120kgだなどと言われてありえない減量を強いていたわけですが、そうしたものもかなりなくなってきたのかな、と。パワハラが問題視される時代ですし、選手の成長をちゃんと意識しての指導が増えてきたのか、生理がちゃんと定期的に来るような体重・体脂肪率にすることでホルモン分泌が適切になり強くなれることが理解されてきたのか。理由は様々あるかと思われますが、良い傾向だと思います。何年か前にも触れましたが、近年女子の長距離が弱くなってきていると言われ、実業団の指導が悪いと指摘をする人も多かったですが、中学や高校時代に無茶な指導をされた結果、骨がスカスカだったり疲労骨折を山ほど経験していたり、燃え尽きていたりという選手が大人になり、伸びしろが全くないから強くなれない、そんな選手を送られても伸ばすのは無理、というのが実業団の方にもあったわけで。2年かけて普通の状態に戻しても、そこまで結果を残せなかったらクビになってしまう確率が高いわけで。育成段階での失敗が大人での結果につながらないという、少し考えれば当たり前のことを、実業団の指導が悪いとしてしまうのはちょっと違うわけで。今回の都道府県駅伝のように、しっかりと身体作りをしている選手が増えていけば、また女子の長距離も社会人になってから活躍する選手が増えていくかと思います。市民ランナーとして活躍される人の中には、中学や高校時代に無茶な練習、体重管理をされてなかったから伸び続けている、という人も一定数おられますし。中学や高校時代にトップ選手として活躍できなくても、成長期が終わってから強くなっていくということを知っていれば、諦めずに競技を継続できるかと思います。目指しているのが高校での活躍なのか、その後の活躍なのか。本人の意識を指導者はしっかりと確認し、大きな可能性を秘めている選手を適切に指導していければな、と思います。