The Science of Track and Field’s New Super Spikes
Alex Hutchinsonによる記事が出ていましたが、簡単な話、ランニングシューズは酸素摂取量を指標として用いることが出来るが、スパイクのように全力で走ることを目的としたものでは、比較がしにくいので効率よく走れる、速く走れるようになる、ということが言えないという話ですね。これを科学的に解析して速さの理由を説明した論文がまもなく出されるところですが、その中で書かれているのが、
Importantly, the effects of super spikes will vary based on several factors including the event-specific speed (i.e. 100 m vs. 10,000 m) and the characteristics of the athlete wearing them.
種目特有のスピードや選手個々人の特徴によって影響が変わる、ということです。スーパースパイクを使うことによるメリットが人それぞれであるため、これが効果的ということが言いにくいわけですね。この論文のイントロ部分ではエネルギーの節約が4%であっても、走る際にタイムが4%向上するわけではないという点を示しています。これはシューズが軽くなればタイムは向上するという論文を引いて説明していますが、より速いスピードで走れるようになれば空気抵抗が高まるため、これまでの厚底シューズのように速く走れますということを簡単には言えないわけです。エリート選手のマラソンにおいては節約されるのは3分の2程度になるであろうとのこと。個人によって変わるという話は永原先生の論文にもある通りで、toe-flexor strength, rebound continuous ankle jump performance, and body mass、によって硬い靴底のスパイクを使えるかの指標になると考えられます。個人によって恩恵が違うというのは、自分に適しているスパイクなのかを考える必要があるということ居なるかと思います。
これまでのスパイクはどうしてミッドソールが無かったのか?これは今の厚底シューズに使われているような軽い素材が無かったため、使用しても重くてタイムが上がらなかったからと説明しています。品質の変化によるエネルギーリターンの向上もあると考えられています。また、スパイクに関しては市場が狭いので大規模な研究が実施されにくいため、タイムが向上する理由を明確にするようなデータは出にくいといったことを述べています。マラソンシューズは市場が大きいので明らかに効果があったというのをアピールするのは商品販売に大きな効果をもたらしますからね。
ランニングエコノミーからタイム向上に関して考えられないのか?という点に関しては、トレッドミルでの測定を上回る速度で走るため、定常化する時間の走行が難しいという問題について触れています。およそ3~4分間の走行によって出てきた数値を分析しますが、その時間を走り続ける速度となると難しいのは経験者ならば分かるかと思います。要するに1500mを3.26.00のペースで4分間走り続けないと比較がしにくいという問題です。測定において世界記録が出ることになります。しかし、800mに向けたスパイクでタイムが向上するとして、それをデータ測定するために4分間走れとなると、800mの世界記録が約1分40秒なので1600m走っても3分20秒。まだ走り続けないとデータが取れません。人間の身体には無理ですね。その他についてもいろいろと触れていますが、結論としては「速く走れるようになるかもしれないがその理由はよく分からん」となると言えます。体重がスパイクとベストにマッチしている、走り方が適しているなど様々な理由が影響するわけで。とにかく履いたら速くなるかもしれないが、その理由は分からんのです、というのが科学的な答えになるのが不思議かもしれませんが、比較ができないのだから現状では仕方がない、ということです。ですので、ベストな使い方、フォームを見つけること、体重を増減させてみること、いくつかのメーカーを試してみるといったことが大事になってくるかも、ということは言えるのかなと思います。