Team inspire official

2020-04-24

ロードを走ることで故障リスクは高まるのか?

このご時世で競技場が使えないため、ロードでの練習が多くなり故障しそうです、故障しましたというご相談を頂くのですが、本当にそれってロードでの練習のせいでしょうか。
そんな話の前に延期されてしまったオリンピック関連でサーフェスの記事をご紹介いたします。

前回東京五輪、陸上好記録支えた「アンツーカー」
サーフェスをテクノロジーする(1)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO05130810S6A720C1000000?channel=DF220420167276

新記録68個、前回東京五輪支えた「夜の保守作業」
サーフェスをテクノロジーする(2)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO09596560W6A111C1000000?channel=DF220420167276

「記録の出やすさ」と「筋肉負担軽減」両立への挑戦
サーフェスをテクノロジーする(3)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO09596580W6A111C1000000/

このサーフェスの話から理解して頂きたいのは、

皆さんがタータンと呼んでいるものはタータンでは無い

ということです。全天候型の陸上競技場、赤や青の表面をしておりますが、あれはタータンではありません。競技場ごとに商品は異なるわけで、タータンと未だに呼んでおりますが、これはnintendo switchを見てファミコンと呼んでいるのと同じです。何で未だにこう呼ばれるかというと、歴史的に受け継がれているからだと思います。陸上部やクラブチームなどに入って競技場で会話をする中でタータンという言葉を覚えたと思います。よって、このタータンという呼び方は顧問の先生や先輩から受け継いだ伝統でしょう。多分この伝統が途切れることは無いと思いますが、取りあえずサーフェスという呼び方でよろしくお願いします。奥アンツーカ、長谷川体育など国内の会社が施工しております。

八王子市の富士森公園に全天候陸上競技場誕生
http://www.hasetai.com/example/detail/1632/?const=1



吹田市にブルートラックと人工芝フィールドの陸上競技場誕生
http://www.hasetai.com/example/detail/1627/?const=1

どちらも長谷川体育施設さんによる施工で表面はレヂンエースです。

レヂンエースです!!
http://www.hasetai.com/method/methodname/16/

ということでタータンでは無いです。さて、サーフェスの話で無駄に時間を費やしましたが、引き継がれる伝統というのはこうした用語に見て取れることがご理解頂けたかと思います。で、タイトルのロードを走ることにおいても、この伝統があるんじゃないのか?というお話です。少し考えて頂ければ分かる通り、今使われているシューズと30年前のシューズではショック吸収能力は明らかに違います。厚底ブームが来ている昨今では、薄い靴と比較してショック吸収能力が高いと皆さん言います。それなのに昔から言われているロードを走ると故障のリスクが高まるというのはおかしくないですか?ショック吸収能力が高まってスピードが出るようになったというのであれば、それはロードを走るからではなく速度や負荷の問題ということになるかと思います。

技術不足によるものや練習のし過ぎをロードのせいにしていませんか?

例えば、フォームを一つ例に取りますと、踵からの接地は衝撃が小さくて故障のリスクが低いと言われます。論文をいくつか眺めましたが、そのような結論に導いています。しかし、別の角度から見てみると踵からの接地により故障のリスクが高まるということも言えそうです。ハンドボールにおけるACL(膝前十字靱帯損傷)の例を眺めると、踵からの接地後に身体が傾くことなどで生じています。 

www.bookhousehd.com/pdffile/msm164.pdf

これはジャンプシュートをゴール前で打つというハンドボールの競技特性によるものだと思われますが、走るという単純動作においても路面が完全に平面とは限らないので、踵から接地した後に膝が完全に固定されることはありません。そうした微妙な路面の凹凸によって膝へのダメージが生じたりするわけですが、それって靴のせいですか?違いますよね。ロードを走るのが苦手な人にあるのが、この路面の違いに適応できないというものです。全天候型の競技場において走る時の力の使い方とコンクリート、アスファルトなどでの使い方には微妙な違いが必要になります。そうした違いを意識せずに全く同じ動きで走る、微妙な路面の違いを意識しないで走るといったことが故障のリスクを高めてしまっていると思われます。シューズの機能がこれだけ向上している今、昔に比べてロードで走ることによる故障のリスクは減っているはずです。それなのに故障してしまうというのは、ロードを走るということへの技術不足か、走り過ぎです。今一度、自分の走り方、路面をしっかりと把握しているかという点を意識して、故障のリスクを減らすようにして練習をしてみてください。

2020-01-26

マラソンにおけるペースメーカーの意義

長距離を走る時にペースメーカーについていくことでタイムが出やすい、という話はよく聞きますが、それって何でなのか?という点に関する話はあまりないように思います。一定のペースで走ってくれることでリズムを作りやすく、上げ下げも無く無駄なエネルギーを使わないから、というのが主流な理屈かなと思います。もちろんそれもあるでしょうが、自分の目標とするペースの設定の人についていっても、そのペースで走り切れる練習をしていなかったら当然ながらタイムは出ません。ですので、普段の練習で子のペースならばこのタイムで走り切れると思うから設定はこれくらいで、というのを弾き出しつつ、それを出すにはすべてを使い果たさないと無理だから余計なことは一切考えたくない、という場合においては心を無にして、ただ前を追うのが理想になります。この点に関してはマラソンでいうとグリコーゲンの貯蔵の話になります。筋肉・脳・肝臓で主に貯蔵されるわけですが、脳のグリコーゲンが一定以上に減ってしまった時に生じるのがよく30㎞の壁と言われる現象であると指定されています。30㎞の壁が30kmで生じる人は、そこまでに至るペースが速すぎたということ、そしてグリコーゲンを使い過ぎたということが言えます。その中でも脳のグリコーゲンをレース中に考えたりして減らすことを少しでも抑える、とにかく何も考えずに走ることで余らせられると30kmの壁が来にくくなるわけです。

スタミナをアップする脳グリコゲンローディング - 筑波大学
https://www.tsukuba.ac.jp/public/press/120131.pdf

こうした点から考えると、ペースがどうなってるかなどを何も気にせず、ただ前の人についていくだけにすると持てる全ての力を発揮できる、となります。ただ最初の方でも述べたように、設定に見合ったトレーニングができているというのが条件になりますので。設定が速過ぎたりした場合は、ペースメーカーについていくことがむしろ逆効果になり、30㎞をもたずにグリコーゲンが大幅に減ってしまって壁が到来してしまうことになります。なお、対策としてはレース中に高糖質な摂取、とくに果糖が含まれたものが良いと考えられております。ブドウ糖のみの摂取よりは果糖も含まれるものを摂取すべきでしょう。そして、貯蔵量を増やしておくのが効果的ですので、レース中よりもレース前の方が大事です。

2020-01-23

腰が高いと速く走れる?

速く走るためには腰を高くしろ、そういう指導はそこそこ各所で見かけるわけですが、元が明らかに落ちているという場合は問題であると思いますが、そうではないのに高くしろという指導をされているのは何でなのか。そもそもに腰が高いと本当に速く走れるのか。この点に関しては「腰が高いと一歩が広がるので速く走れる」という思い込みがあるのが問題だろうと思われます。ストライドが広がることで速く走れるという単純なことに落とし込んだ結果、ただ一歩を広げようとするわけです。残念ながら、これによって速く走れるようになるかは疑問です。
腰を高くして一歩を広げると何が起こるか?多くの人においては膝が伸び切った状態かほぼ伸びた状態で接地していきます。これは大きなブレーキを生じさせます。またつま先が上がって踵から接地し大きなブレーキを生み出した結果、力を上方向にしてしまい軽くジャンプします。これにより脚の回転が遅くなります。一歩を広げた結果、脚の回転が遅くなるので結果として走るのが遅くなります。また、膝が伸びた状態というのは力を地面に加えるのが難しいため、接地から離地までの間に不安定な状態に置かれます。これを防ぐために体幹を鍛えましょう、なんていう本末転倒な指導をしている光景も見られますが。また、膝関節が伸びていることで走るというよりは競歩のような動作になるので、どう考えても速く走れるフォームにはならないとイメージしてもらえるかと思います。なお、一瞬でのダッシュが必要な野球、サッカーなどの競技においては膝関節が適度に屈曲した状態の方が一瞬で爆発的な力を出せるので合理的です。これを実現するには適度に腰が落ちていると言われる状態が良いでしょう。この姿勢で長い距離を走れるか、となるとまた難しい話になりますが、練習をこなしていくうちに走れるようになる、というのが答えになるのかと思います。以上、腰が高いと速く走れるというのは勘違いだよ、というのを文字にして説明しようと思いましたが、よく分からんな、というので終わりそうな駄文でございました。直接実体験していただくのが手っ取り早いので、メールを頂ければ直接の指導にご対応いたしますので、ご連絡下さい。

参考
https://doi.org/10.5432/jjpehss.KJ00003392100