トレーニングをしていく際に、何かを学ぶことで最短距離で自らが目的とするゴールへと辿り着く可能性が上がります。何も考えずにガムシャラにやっていくよりは、教科書などを参考に、先達の言っていることを参考にしていくと良いという話ですね。車輪の再発明という言葉を知っている人もいるかと思いますが、
車輪の再発明(wikipedia)
多くの人に既に知られていることであっても、それに触れていない、知らない人にとっては重大な発明をしたと思ってしまう問題というのはよく見られます。例えば、速く走るためのトレーニングとして効率が良いものを運動生理学を勉強し、実験をして突き詰めていった結果に生み出して、これは合理的で最高のトレーニングだと思った人がいるとします。一方で、それと全く同じことを経験から生み出してしまった人もいます。これは勉強して突き詰めた人が経験から生み出した人に出会えれば、勉強する時間を大幅に減らして生み出すことが出来たかもしれない、と言えます。自分の努力によって既に知られていることを発見した人に多く見られるのが、ダニング=クルーガー効果ではないでしょうか。
ダニング=クルーガー効果(wikipedia)
俺は独力で発見したんだ!!という思いがあるのは当然かもしれません。しかし、そんなものは誰かに話を聞いたら簡単に発見できたのに、少し勉強すれば知れることなのに、ということでも自信を持ってしまって自分が最先端を行っていると勘違いしていまうのはよくあるかと思います。また、先達の人たちが情報を残していない、共有をする機会が無くて再発明されてしまうことというのもよくあります。大学の部活動などで指導者が系統立てて教えることで、そうした点は防げるような気もしますが、必ずしも部活など組織に属してトレーニングなどをするわけではないので、どうしても情報の共有というのは難しい問題となります。私の場合は陸上競技の中距離、特に800mという種目において過去に日本のトップ選手を指導していた経験があるため、情報を求めて話を聞きに来る選手がいたりします。この情報を聞きに来る人が自分の現在のトレーニングの状況などの話をしてくれる結果、私の元には多くの情報が集まります。その結果、問題はどこにあるのかというのを指摘することはそれなりに簡単になります。情報の共有が出来れば一から調べることもなく終わります。こうした知識や経験の蓄積が指導者の存在する大きな意義の一つになるのでは、と思う所です。多くの情報を保有している指導者から情報を全て引き継ぐことで再発明をしないで済むようになるわけですが、完全コピーをするのが難しいのは当然です。ですので、ある程度は学ぶことが出来るが、最終的には自分で経験をすることで確立することになります。過去にその分野でいろいろとやっている人に話を聞くというのは、成長するため、成果につなげるための近道となるはずですが、この部分を軽視している人も多い気がします。自分で独自の理論を身につけるとしても、どう勉強するのが良いかというのはその道を既に通った人に効くことで短縮可能になるはずです。ハズレを引いてしまう可能性もありますが。
選手として活躍できる時間というのはそんなに長くないのに、既に発明されたものを再発明するのに多くの時間を注ぎ込んでしまわないように、他人の知恵を貰うこと(借りるではなく貰う。対価を支払って貰う)は大事です。教科書を読む、本を読む、話を聞く。様々な方法で他人の知恵を貰う手法がありますので、自分でゼロから作り出さずに最短のルートを通る工夫をもっと見つけて頂ければ、と思います。
春になって高校生や大学生らが先輩というポジションに立ち、自分の経験から指導したりして、才能を潰してしまっているのでは?と思う場面を目にします。この問題はどうにかしたいところです。学校という組織なら情報共有はしやすいはずですが、何も残らないことの方が多い気がしています。成功した人の表面的な所だけでなく、全体を通して眺める、代表的な練習ではなく普段において何をしていたか。そうした細かい所の方が大事であったりしますので。再発明をする部分を極力減らすことで、もっと成果は出るのではないでしょうか。
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