Team inspire official

2019-05-17

世界リレー2×2×400を見ての感想

決勝の結果と400m、800mのPBを調べてみると、
1位アメリカ
CE'AIRA BROWN
2013年に56秒00、2018年に1分58秒01
DONAVAN BRAZIER
2016年に47秒02 2016年に1分43秒55

2位オーストラリア
CATRIONA BISSET
2019年に56秒52 2019年に1分59秒78
JOSHUA RALPH
2013年に46秒34 2015年に1分45秒79

3位日本
AYANO SHIOMI
2018年に54秒32 2018年に2分02秒73
ALLON TATSUNAMI CLAY
2019年に47秒94 2018年に1分47秒51

4位ポーランド
ANNA DOBEK
2018年に54秒00 2018年に2分09秒44(200mは24秒76)
PATRYK DOBEK
2013年に46秒15 800mPBなし(200mは2015年に21秒38)

5位ベラルーシ
MARINA ARZAMASOVA 
2012年に52秒81 2015年に1分57秒54(2015年世界選手権800mチャンピオン)
ALIAKSANDR VASILEUSKIY
2018年に47秒75 1分58秒16(2017年に室内で1分54秒87)

4位のポーランドは短距離選手を使い、5位のベラルーシは男子が短距離選手だったのかな、という具合です。日本は400のPBからするとSHIOMIは800が長い距離になっている可能性も考えられるのかな、と。ベラルーシのMARINA ARZAMASOVAがより速い400のPBなので、まだ持久力と呼ばれるものが不足しているだけとも考えられますが。
そんなことよりも本題として取り上げたかったのが、どうして400mなのに短距離選手を中心とするチームよりも800m選手二人をそろえたチームの方が速いのか、という点です。回復時間が~という意見もあるかと思いますが、それだと”みんな大好き余力理論”に疑問が出ませんか?46秒台の短距離選手が50秒で流して走ったら余力が残って回復なんてそんなに必要とせずに二本目にいけるんじゃないの、と。絶対的なスピードに対して遅く走れば余裕がぁーーー、余力がぁーーー、というのは中距離や長距離の人でよく聞くやつです。まぁあれで言うならウサイン・ボルトが世界最速のマラソン選手になるでしょ、というので大体片付けておりますので、余力理論に対する疑問なんてそもそも無いんですけれど。遠回りして再び本題っぽいところになるわけですけれど、

どうしてほぼPBが1秒差程度の選手で二本目を50秒程度のrestで走ると大きな差になるのか?

という疑問です。これに関してはいろいろと思うところはありますが、エネルギーの貯蔵量、一気に使う能力、この辺りから話をすることができるだろうな、と思います。細かい説明は省きますが、短距離の人たちが求める能力は一瞬にして全てを発揮する能力。それに対して中長距離、今回で言うなら800の人が必要とするのはジワっと出し続ける能力です。400mを走るに際してペース配分など考える所もあるでしょうが、全てを出し切るという点に長けていることが短距離との”1秒差程度”というのになるのかな、と。ここを埋めることができないから多くの800選手が400のタイムは速くないけど800になると速くなる、ということになるのだと思います。出し切れないけれど微妙な余力をそのまま次の2周目に使える。レース中にもある程度の回復を見せる。こうした能力の差がほんの数秒と思うが詰め切れない本の数秒の差になるのではないでしょうか。

要するに、中長距離選手がスプリント能力を重視する必要はそこまで無いよね

ということです。トップスピードが高いのは大事ですが、一瞬のキレというものはそこまで多分必要ないわけで。レース中に残された余力が最後のスピードとして出てくるわけで、大事なのはトップスピードを磨くことよりも、レース中に回復する能力、そもそもの貯蔵されるエネルギー量では、と。もし2×2×400に短距離選手が出た場合どうなるかというのは、エネルギー貯蔵は多いが回復力が低いので50秒程度のrestで回復しないために二本目は爆死する、ということになるかと思います。

今回、このリレーを見て思った大きなところとして他にあるのが、普段の練習におけるつなぎ、restの設定の仕方です。ここをあまり深く考えずに設定している人は多いと思いますが、ここはかなり重要なポイントとなってくる点です。短距離選手で400+400をやる人は少ないと思いますが、その理由としては実際のレースではほとんど起こりえない状態であり、トレーニング効果として期待できるものがよく分からないから、というのがあると思います。一方で800選手はそのまま自分の走る距離になるのでイメージもしやすい。じゃあ短距離選手がこの練習をやる意味は無いか、となると難しい話に。。。エネルギー面、細胞面などから考えたらやるべきではあるが、筋肉がブチッといくリスクも上がるので何とも。ペースを遅くすることで意味が薄くなってしまう点もあるしetc...

まぁその他にもいろいろと思いましたが、本当に400選手よりも800選手の方が速いの?46秒台のPBの人が50で余裕を持って走ったら二本目は上げられるんじゃないの?という疑問をどうにか解消したいところです。ボルトも400は45秒台のPBを持ってますけど、60秒のrestで二本目となったらどれくらい走れるのか。そんなことも思ったりしましたが、とりあえず練習などで考えるべき点を示してくれたリレーだったな、と。

2019-03-12

LTペース、OBLAペースにおける勘違い

何だかtwitterを眺めていて少し話題になっていたものですが、書こうと思って放置をすること一ヶ月くらいのネタですかね。乳酸値の測定をしてトレーニングに活用するというのは話自体は分かりやすいですが、

定義をしっかりしてから話をしろ

と思うここ数年です。お前は何を言っているんだ?というのはよく見かける案件ですが、話をする前提として同じ定義で話をしているかどうかの確認は重要です。件のLTに関しましては、

LT→乳酸値がやや急上昇を始める2mmolを超えた地点
LT→乳酸値が急上昇をしていく4mmolを超えた地点

この二つで明らかに話の食い違いをしているのを何度も目撃しております。LTを2mmol、OBLAを4mmolとして私は認識しておりますので、上ので言いますとLTは2mmolを超える地点であり、OBLAが4mmolを超える地点で話をしているのか確認をします。また、外国の選手がトレーニングにおいてLTと言っている場合も確認をします。本当に2mmolのことを言っているのか、と。 多くが4mmol近辺のことを言っているようですが、この辺りを確認もせずにLTが~、という話をするのは問題を引き起こします。あの選手がこう言っているから!!という話をされる方もいらっしゃいますが、あいつの定義はちゃんと確認してあるんだよね?してないのに何でLTが2mmolじゃないって分かるんですか?どう考えてもトレーニング負荷が低くor高くなり過ぎますよね、という返しをするのにも飽きてきました。この辺りの定義の確認という話は面倒くさいと思われる人も多いですが、自分が知っている知識のことで相手が話をしているという思い込みは大きな事故を招きます。相手が勘違いしていることもありますし。LTの話をする時は相手の言っていることの確認はとても大事です。

これと関連した話になりますが、LTでのペース走、OBLAでのペース走という話においても勘違いをしている人が散見されましたので少々。

LT(2mmol)の速度でずっと走り続けるとそのうちOBLAに達します

これです。この点を理解していない人も多く見られましたので。LTやそれ以下の負荷の低いペースで走り続けることによりエネルギーの減少などにより筋の出力が低下していくので、ある程度の距離・時間をこなしていくと速筋が動員されていき、血中の乳酸値が4mmolに達することとなります。同じペース、LTより遅い速度で走ると乳酸値が変化しないという勘違いをしないでください。筋肉が動かなくなってくる(疲れると呼ばれる状態、原因は様々な変化が体内で生じるから)ことで出力を高めるという事実を忘れ、長時間の遅いペースでも負荷は低いのが続くという誤った説明をされていますが、そのようなことはございませんので。長時間の運動の継続は速筋の動員を高めます。もちろん、低すぎて余裕があれば速筋の動員にまで時間を要しますが。この点の理解があれば、暑熱や高地でのトレーニングに対する理解も高まると思います。

2019-02-16

小中学生、高校生のトレーニングを考える時の基本

中学生のトレーニングに関して質問をよくされますが、小学生と高校生も基本となる点は同じですのでまとめたタイトルにしました。基本となる点、最も重視すべき大事な点は

「成長期を迎えていなかったら何をやっても大きな伸びは期待できない」

ということです。高校生を入れているのは、高校生でもまだ成長期のピークを迎えていない人は多いからです。誰もが中学生の時に成長期を迎えて成長のピークを迎え、心身が発達するわけではありません。高校3年生くらいになってやっと成長期のピークが来る男子はそれなりに多いです。どれだけトレーニングや食事などを完璧にしても、サッパリ筋肉が増えない、というのはあります。逆に小学生だけれども成長期を迎えピークも来ている、という人もいます。女子に多いわけですが、こうした子と成長期がまだまだの子を一緒にして筋肉を増やすような、心肺機能の発達を促すようなトレーニングを実施したところで、効果が期待できるのは成長期を迎えている方です。そうではない子たちにとっては負荷が過剰であり、苦痛でしかないものになります。もちろん、強くなれると信じてやっている場合も多いと思いますが、そうだとしても成長期という筋肉が、骨が、内臓が大きくなる時期を迎えていなければ効果は微々たるものです。ケガのリスクは高いのにあまり効果は期待できない。成長を抑制してしまうようなことを無理にやらせるよりは、適度な量のトレーニング、技術をメインとしたトレーニングを中心として楽しく過ごしてもらい、身体が本格的に大きくなり始めたら、筋肉が増えやすい状態になってきたなと考えて、そろそろトレーニングを本格化させようか、となれば良いと思います。ですので、小学生や中学生を指導するのであれば、身長の変化というのはかなり丁寧に見ておくべき要素だと思います。急激に伸びるようになってきたら、そこは確実に成長期を迎えていると判断できますので。ただ、遺伝的な要素か何かで身長があまり伸びない子もいますので、そうした子は毛が生えてきたかどうか、というのが判断材料になるかと思います。スネやヒゲの毛などでなんとなくは分かるかと思います。ただ、この辺も毛が少ない人はいるので絶対的な判断にはなりません。ですので、これだけ見ておけば良いということは言えませんが、まずは成長期が来ていなければ何をしても効果は薄い、成長期が来て身体がしっかりとしてくる時に向けて技術的、メンタル的な面を丁寧指導しながら待つ、というのをもっと考えてやっていければ良いのでは、と思います。無理をさせる必要は無いですし、選手にも指導者にも無駄な時間となってしまうので、成長期じゃないし練習は減らしておこう、学校の勉強をしっかりやろう、他の選手の動きを参考に技術を磨こう、という形でアプローチすれば次のステージにおいて役立てられる指導になると思います。

選手にはまだ次のステージがある

という点を意識して、自分のところだけでどうにかしようとせず、伸びる子は伸ばす、身体がまだまだの子はケガをさせないように、苦しくて楽しくないと思わせないようにして次の準備をさせる。そういった指導が出来れば良いと思います。技術的な面も筋力が不足していたら出来ないこともあると思いますので、上手く伸びしろを作ってあげる、気づかせてあげられるのが良いのでは、と。