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2021-10-03

エリートスプリント選手のトレーニングと発展

The Training and Development of Elite Sprint Performance: an Integration of Scientific and Best Practice Literature
Thomas Haugen et.al  Sports Medicine (2019) 
https://link.springer.com/article/10.1186/s40798-019-0221-0

・100m走の世界記録が飛躍的に伸びてきたのは、トレーニング方法の進歩と意図的な練習、路面やシューズの改良によるものである
・スプリントパフォーマンスは様々な方法で簡単に改善できると考えられているが、エリートアスリートの長期間の観察は、それとは異なる現実を示している。この発表されているデータとの違いは、肯定的な知見に有利な出版バイアス、被験者のトレーニング状況バイアスである。ほとんどの実験データはトレーニングを受けていないか、または中程度のトレーニングをしている選手の研究から得られている
・世界トップクラスのスプリンターに関するこれまでの研究では、年間のサイクルで変化するトレーニングの構成要素(様式、期間、強度、休息期間、セッション数など)について触れたものはなく、世界レベルのアスリートが行っているトレーニング方法の発展は、スポーツ科学者によってもたらされたものではないと言ってよいであろう
・このレビューの目的は、エリートスプリントパフォーマンスのトレーニングに関する科学的なデータとベストなトレーニングの文献を統合することである

スプリントパフォーマンスの決定要因
・100mは伝統的に加速、最大速度、減速の3つの主要な段階に分類されてきた
・速度曲線はパフォーマンスレベルに関係なく一貫しているが、各段階の持続時間と質はアスリートによって異なる。全体的に、最大速度は100m走のパフォーマンスと高い相関性があり、トップクラスの選手はパフォーマンスの低い選手よりも長い距離加速する
・パワー、テクニック、そしてスプリント特有の持久力は、100mスプリントのパフォーマンスを決定する重要な要素と考えられている
・水平方向の最大パワーとスプリントパフォーマンスの間には非常に強い関係があり、スプリント距離が短いほど水平方向の最大パワー出力との関連性が高くなる
・ステップ長、ステップレート、接地時間、空中時間がスプリントに関する大きな変数として考えられる
・スプリントの力学的変数は複雑に絡み合っており、単一の変数がパフォーマンスの向上と関連しているわけではない
・スプリント特有の持久力とは、スプリントの減速段階のことであり、速度の低下は歩数の減少を伴う。スプリント関連の疲労は、骨格筋内の中枢神経系および末梢因子の障害に起因するとされている。現在の研究では、弾性エネルギー貯蔵に影響を与える脚のスティフネスがスプリント特異的持久力に特に重要であることが示されている(56,57,58,59,60,61)
・スプリント特有の持久力は、瞬間的なエネルギー供給によっても決定される。100m走での相対的なエネルギーシステムの寄与率(貯蔵アデノシン三リン酸、貯蔵クレアチン、解糖)は約80%と推定される

スプリントのパフォーマンス開発
・ワールドクラスのスプリンターのパフォーマンスがピークに達する年齢は、通常25~26歳だが、若い時期に専門的なトレーニングを開始したアスリートはより早い年齢でピークパフォーマンスに到達する傾向がある
・Haugenら(5)は20代前半の世界トップ100のスプリンターの年間平均向上率は、わずか0.1~0.2%であると報告している。非常に優れたアスリートは、パフォーマンスがピークに達する年齢の直前の数年間でより大きな向上を示す
・パフォーマンスレベルに応じたトレーナビリティのばらつきは、トレーニング状況、トレーニングへの反応性、コーチの質、栄養状態などによっても説明できる可能性がある
・Bocciaら(79)は才能のある若い選手の10代前半の競技成績は、走幅跳と走高跳におけるシニアレベルでの成績の予測因子にはならないとしている。これはスプリントにも当てはまると考えるのが妥当である
・すべての知見を総合すると、過度な専門化をせずにジュニアレベルで高いパフォーマンスを発揮するスプリンターは、シニアでの成功に向けて最適な状態にあると言える。過度の専門化と不適切なトレーニングは、非機能的なオーバーリーチ、オーバートレーニング、パフォーマンスの停滞の確率を高める(80, 81)

トレーニングの原則
段階的過負荷
・長期的なパフォーマンスの向上は、十分な回復を確保しながら時間をかけてトレーニング負荷を増加させた時に達成される(85)。実際、大きなトレーニング負荷を実行して吸収する能力は、時間の経過とともに適応し、それ自体が才能であると考えられている
・スプリントトレーニングの負荷は、トレーニングの様式(スプリント・ランニング・筋力トレーニング・プライオメトリックトレーニングなど)、期間、強度、休息期間、セッションの頻度、走る時のサーフェス(コンクリか競技場か芝生かなど)、シューズなどの要素によって決定される
・漸進的過負荷の原則は、長期的なトレーニングの適応を刺激しつつ傷害やオーバートレーニングのリスクを低減することを想定している
・軟部組織の損傷の大部分は、トレーニング負荷の過度かつ急激な増加が原因であると考えられる(86, 87)
・スプリンターの場合、オフシーズン直後のトレーニング期と、準備期間と競技シーズンの間の移行期が特にケガをしやすい時期である。Haugenら(88)はスプリンターのハムストリング損傷の3分の2は、特定の準備期間と競技シーズンの間の移行期間に発生しているとしている
・トレーニング時のスピードと競技時のスピードの差が大きすぎると怪我のリスクが高まるとされるが、この関係についてのデータは無い
・走る時のサーフェスとシューズは、トレーニング負荷の重要かつ特異な調整因子である。一般的に、路面が硬いほど、下肢の神経筋の負荷が高くなると考えられている(10, 11, 13, 14, 15)。スパイクでゴム製のトラック表面で高負荷のスプリントセッションを行うことは中枢神経系への負担が大きい。そのため集中的なスプリントセッションには少なくとも48時間の回復が必要であることが経験的に示唆されている
・リカバリーセッションや低強度のインターバルは、クッション性のあるランニングシューズで芝生や人工芝の上で行われる。ジャマイカのスプリント競技では芝生の上で低強度のインターバルトレーニングを行うという長い伝統がある(10)

ピリオダイゼーション
・ポラライズドトレーニングのコンセプトだと、パフォーマンスを向上させるためにはスプリント強度を最大速度の95%以上にする必要があり、回復を促進するためには70%未満にする必要がある(11,13,14)。中途半端な強度(70~95%)は、パフォーマンスにも回復にも有益ではなく避けるべきだと考えられている。ドノバン・ベイリー(元100m走世界記録保持者、オリンピックチャンピオン)のコーチであるダン・パフは、競技シーズンに向けたマイクロサイクル構築の中で、同時並行的、二極化的、短期から長期への思考モデルを実践してきた(11,17)。3日間のトレーニングブロックを利用し、月曜日に短距離の加速、水曜日に最大速度のスプリント、金曜日にスプリント特有の持久力を行う
・特定の集団で行われている偏ったトレーニング構成は、典型的な偏ったパターンで構成されているエリート持久系アスリートのトレーニング強度分布と非常によく似ている。スプリント走では、最高速度でトレーニングする際に必要なトレーニングの質と、同時に十分なスプリント量を確保するという二極化のアプローチに似ているかもしれない
・ポラライズドトレーニングの概念の基本的な生理学的メカニズムはまだ解明されておらず、今後の研究ではこのテーマにもっと注意を払う必要がある
・エリートコーチはトレーニングをかなり詳細に計画しているが、スプリントにおける特定のピリオダイゼーションモデルの優位性のメカニズムはまだ明らかになっておらず、結果を比較できる直接的なデータはない

個別化
・トレーニングは個人のパフォーマンス能力や素質(体格、トレーニングの状態、年齢、性別、回復、怪我の状態など)に応じて処方しなければならない
・平凡な選手が世界トップクラスのスプリンターのステップの長さに合わせようとすると、地面反力が通常よりも垂直方向に向くため、スプリントが遅くなる可能性が高くなる
・トレーニングの総量は一般的に年齢とともに増加するが、キャリアの後半になると高強度セッション間の回復時間の必要性が高まるため、トレーニング量が減少することがある。これは、トレーニングに応じた身体の代謝、組織修復、同化能力に重要な役割を果たす同化ホルモン濃度の加齢による変化と一致する。例えば、テストステロンはスプリントのパフォーマンスにプラスに働く(98)が、循環テストステロンレベルは毎年徐々に低下する(74, 99)。
・トレーニングに対する内分泌反応にも性差があり、男性はテストステロンと遊離テストステロンが回復に入ると30分までの間に有意な上昇が見られたのに対し、女性では急性の上昇が見られないか限定的である(100)
・ジャマイカのスプリントコーチとして知られるスティーブン・フランシスは、女性は男性よりも20%少ない量でトレーニングセッションを行うべきだと主張している(10)が、女性の最大速度は男性よりも10%程度低いため、女性はより高いトレーニング量で行える(これは神経筋にかかるピークフォースとパワーの負荷が大幅に低いため)とも考えられる。トレーニングの性差に関する情報は非常に限られており、今後の研究ではこのテーマにもっと注意を払う必要がある
・UK Athleticsがまとめたガイドラインでは、スプリントに特化したトレーニングセッションにおける期間、反復回数、回復時間はトレーニング状況やパフォーマンスレベルに応じて調整すべきだとしている(15, 16)。エリートアスリートが行う各スプリントは、パフォーマンスの低いアスリートに比べて神経筋系全体への負荷が高く、各スプリント間により多くの回復時間が必要であるとされている
・最近では力-速度(Fv)プロファイルに基づいて個別のスプリントトレーニングを行うべきだと提案されている(97,101,102)が、このようなアプローチが効果的かどうかはまだ不明(103) 。このアプローチは、ランナーの加速度およびピーク速度の測定値と、関連する筋群の基本的な収縮特性との間に直接的な関係があると仮定することに基づいているが、活動中の筋肉の筋膜短縮速度はランニング速度の増加に伴って必ずしも変化しない(104,105,106)。ランニング速度は筋収縮速度の代用品ではないとしてHellandら(107)はFvプロファイリングの使用に疑問を呈している。力-速度評価に基づいてどのようにトレーニングを評価・修正すべきかはさらなる研究が必要

トレーニング方法
スプリントトレーニング
・スプリントトレーニングの研究の大部分は、短いスプリントと短いリカバリーが標準となるチームスポーツの若い選手を対象として行われているので、研究から得られたスプリントトレーニングの推奨事項は100m走の選手がさまざまな距離で行うトレーニングや競技スプリントにはあまり関係がない
・セッションの総量は、強度と技術の目視によって決定される。パフォーマンスの低下や技術の劣化が見られた場合にはセッションを終了する必要がある(11,13,14,15,16)

加速
・加速に主眼を置く時はブロック、しゃがみ、3点支持のスタートから10~50mのスプリントを行うことが推奨される(10,11,13,14,15,16,17,18)
・ブロックスタートはスタンディングスタートよりもエネルギーコストが高いと考えられている
・使用する距離は選手のパフォーマンスレベルによって異なる(速い選手は加速に時間がかかるのでより長くなる)
・各スプリントの間には完全な回復が必要であり、UKアスレチックスはエリートスプリンターは若年層の育成選手よりも長い回復が必要としている(15)。トレーニングを積んでいない若いアスリートの加速セッションは、しゃがんだ状態でのスタートから20mの距離を2分間のリカバリーを挟んで走ることを推奨し、エリートスプリンターはブロックから40mの距離を7分間のリカバリーを挟んで走ることを推奨している

最大速度
・Flying sprint(加速走)は最大速度を高めることに重点を置く場合に推奨される(11,13,14,15,16)。可能な限り最高速度に到達し、速度が低下しない限りスプリント走を継続するのが目的となる。最大速度を維持できるのはパフォーマンスレベルやトレーニング状況にもよるが、10~30m程度とされる(31,32)
・加速走はrolling(jog in)スタートで行われることが多く、より高い最大速度を達成することができ、より少ないエネルギーで最大加速後と同じ速度に達することができる
・距離は最高速度を出すために必要な距離に応じて、20mから60mの範囲で設定する。若くて比較的トレーニングをしていない選手は、20mの加速から10mのダッシュを行い、その間に4分程度のリカバリーを行います。エリート競技者は40mの加速に30mのダッシュを使用する。パフォーマンスを再び再現するためには、リカバリーが15分程度必要になることがある

スプリントに特化した持久力
・スプリントに特化した持久力トレーニングの目的は、スプリントの速度をできるだけ長く維持する能力を向上させること。95~100%の強度で7~15秒間走を行い、しっかりとした回復を2本目までに行う(11,13,14,15,16,17,18)。最大スプリントに1秒かけるごとに1~2分の回復が必要という経験則がある(15,16)。走力が高ければ高いほど回復時間は長くなる。
・比較的トレーニングを積んでいないジュニア選手にとっては、2~3回の100mスプリントを10分間のリカバリーで行うことがスプリントに特化した持久力トレーニングとして適切であるかもしれない。エリート競技者は4~6回の150mスプリントを20~30分間の回復時間で行うことができる

スピード持久力
・多くの研究ではスプリントの反復は最大速度で行うことが推奨されているが、著名な選手やコーチらは準備段階でのスプリントトレーニングは最大速度以下の強度で行うことを推奨してきた。先駆者であるCarlo Vittori(元200m世界記録保持者のPietro Menneaのコーチ)は、1970年代半ばにスピード・エンデューランスというコンセプトを導入していた。これは60~80mのスプリントを繰り返すことで構成されていて、スプリントのセット間には約2分と8分の回復時間が設けられている。最初の数週間は最大スプリント速度の90%の強度で、準備期間中は95%まで上げていく。これに伴い準備期には総距離を6~800m(例:5×60mを2set)、最大で1500~2000m(例:5×60mを5set)と徐々に増やしていく。競技シーズンが近づくにつれ、総量は減少する一方で、強度は最大努力まで徐々に増加していく。このコンセプトは、その後、他の有名なスプリントコーチにも採用された(11,13,14,15,16)
・持久力トレーニングや筋力トレーニングでは、最大強度以下の負荷でも効果的に適応を促すことが明らかにされている(90,108)。適応を刺激するための最も効果的なスプリント強度は今のところ研究では明確になっていない。最大速度の95%まで下げることは、神経筋系にかかる力とパワーの負荷を大幅に減らすことになる
・多くのコーチはスピード持久力トレーニングを減速段階に結びつける傾向があるが、チームスポーツのアスリートを対象とした研究によると、最大値以下のスプリント(最大速度の90~95%)は、加速段階の改善よりも最大速度の強化に効果的であることが示されている(109,110,111)

Resisted Sprinting、Assisted Sprinting、これといった話が無いので各自でどうぞ

技術練習
・技術の重要性は研究でも強調されているが、最適なメカニクスをどのようにして達成するかの研究は非常に少ない
・子供の頃は基本的な動作スキルを習得するのに最も適した時期であることは明らかだが、で(123,124)シニアの年齢に近づくにつれランニングの動作を修正するのが難しくなることを経験した人もいる(10,11,15,16)。スプリンターのメカニクスを改善することは、キャリアをかけて追求することであると考えられる
・スプリントトレーニングには技術的な側面が常に含まれているが、スプリントドリルは、技術的な作業を強化するため、特定の動作の特徴を分離するために一般的に使用されている。これにはハードルドリル、ウォーキングハイニー、ランニングハイニー、スキップ、バウンディングなどがあり、姿勢、ハイヒップ、前足での着地などに焦点を当てている
・ドリルは高速で走るよりもコントロールしやすいので、通常はウォーミングアップの一環として行われる
・運動学習の研究では技術の積極的な強化を行うためには練習で使用するバイオメカニクスが競技で使用するものに近いものでなければならないとされる(89,122)。選手の制限要因を考えて、各選手に適切なスプリントメカニクスの感覚を提供するために、個別に処方される必要がある

ストレングス&パワートレーニング
・スプリントパフォーマンスの向上は、筋力トレーニングを行った直後に起こるとは限らない(134)。実際、高負荷な筋力トレーニングはスプリントパフォーマンスに短期的な悪影響を引き起こす可能性がある(135)
・アスリートの体重が重くなると加速させるためのエネルギーコストも増加し、空気抵抗も増加する
・Haugenら(35)はバレーボールやビーチバレーの選手が加速時の水平方向の力の発生において最も優れたスポーツの一つであるとしている。一方、ウェイトリフティングやパワーリフティングの選手は明らかに低い値を示しました。垂直方向に強い筋力トレーニングを行ったところで、加速時の水平方向の力生産が自動的に高くなるわけではない(137)。そこで筋力トレーニングとスプリントトレーニングを組み合わせると、プラスの効果が得られる可能性が高くなる(90,138,139)
・ストレングスとパワーのトレーニングは通常、準備期間中に週に2~3回行われる。スクワット、スナッチ、クリーン&ジャークなどから、よりスプリントに特化したスプリットスクワット、シングルレッグデッドリフト、ランジ、ステップアップ、ワンレッグスクワットなどまで様々な種目が実施される
・セッションの順序はコーチによって異なるが、スプリント時の筋肉痛を避けるためにスプリントに特化したトレーニングの翌日に筋力トレーニングが実施されることが多い
・ストレングス&パワートレーニングは4~6週間のサイクルで構成されていて、最初に筋肥大、次に最大筋力、最後に爆発的な筋力・パワー・プライオメトリックトレーニングに重点が置かれる
・このような重い筋力トレーニングの期間は、多くの場合において最大値以下の強度での大量のスプリントトレーニングと組み合わされる。競技シーズンが近づけば近づくほど、最大速度のスプリント、爆発的な強さの練習が強調される
・この点に関しては科学とベストとされるトレーニングの間に大きな矛盾は見られない

プライオメトリックトレーニング
・プライオメトリックは急速な伸張-短縮サイクルの筋動作を特徴としており、片側および両側のバウンディング、ホッピング、ジャンプ、メディシンボールスローのバリエーションが含まれ、動作中の最大パワー出力を著しく向上させることが示されている
・スプリンターはパワーが水平方向で発揮されるように、さまざまなタイプの高負荷のバウンディング、ジャンピング、スキッピングエクササイズを使用することが推奨されている(130,141)。これは神経系の適応をもたらし、力の発生率が向上すると考えられる
・弾性エネルギーの貯蔵と放出には時間がかかるため、スプリント・パフォーマンスの戦略として貯蔵エネルギーを再利用することは、Haugenら(24)によって疑問視されている。人間の腱は負荷がかかると伸びるので、スプリンターはこの弾性によるデメリットを最小限に抑えるべきであろう。世界トップクラスの選手は下位の選手に比べてかなり高い脚部の剛性でスプリントを行っている(24)。これらの考察に基づくと、スプリンターはプライオメトリック中に脚のスティフネス(例、短い接地時間)に焦点を当てるべきであろう
・このアプローチは1970年代にCarlo Vittoriのイタリアのスプリントトレーニングの学校で利用されており、成功したように思われる。トレーニングでの接地時間は100msを超えることはなく、これはエリートスプリンターが最大速度走る時の接地時間と非常に似ていた(24)。これらのトレーニングは脚のスティフネスを強く刺激するが、負荷が高く、特にアキレス腱の損傷リスクを高める可能性がある
・最も量が多くなるのは準備段階においてみられる。一部のプライオメトリックトレーニングは競技シーズン中にも行われる

リカバリー戦略
・アスリートのパフォーマンスはトレーニングと回復の最適なバランスに依存している。睡眠と栄養は、日常生活の回復と運動後の回復の基本である(142,143,144)
・硬くなった筋肉をほぐし心肺機能を向上させるために、激しいトレーニングの合間にテンポラン(100~300mのランニングで、つなぎは短く、強度は最大スプリント速度の60~70%)を行うことが一般的に行われている(10,11,13,14,15,16,17,18)
・スプリントトレーニングにおけるテンポランは、持久力トレーニングでのテンポランとは異なる!!
・トレーニングでの走行距離は、準備段階は約2000m、シーズン中は約1000mとされる(13,14,15,16)
・運動後の回復を目的とする際の科学的根拠は限られているが(145,146,147,148)、テンポランはトレーニングの総量に大きく関わり、長期的にはアスリートの耐久性を高める可能性がある
・マッサージ、ストレッチ、コンプレッションウェア、アイスバス、アイシング、高気圧酸素療法、電気筋刺激など多くの回復方法が長年に渡り用いられているが、運動後の回復においては主観的なメリットはあるかもしれないが、今のところ競技アスリートにおいて使用することを正当化する説得力のある証根拠は無い(142,146,149,150,151,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162)。プラセボ効果は有益な可能性があるので、個人レベルでは特定のケアが回復過程において再現可能な回復の加速を引き起こしているかもしれない
・今後、エリートアスリートの状況を反映した実験モデルを用いて、様々な回復方法がスプリントパフォーマンスに対してどのような影響を与えるか、有効性があるかについてさらなる知見を得ることが必要である。

テーパリング
・テーパリングは疲労が累積的することによる悪影響を軽減しつつ、フィットネスを維持するというバランスをとる行為である(163,164)
・テーパリング戦略とその結果は、先行するトレーニング負荷に大きく依存する。そのためテーパリングを一般的なピリオダイゼーションやトレーニングプログラミングから切り離すことは困難とされる
・最終的なテーパリングの現実的なパフォーマンス目標は、約2~3%の競技パフォーマンスの向上であるべきだとされているが、これらの推定値は主に持久系(水泳、ランニング、サイクリング)または筋力関連のスポーツにおいてしっかりとトレーニングを積んだアスリートのデータに基づいている。そのため、エリートスプリンターのパフォーマンスの変動データ(5,69)に基づくと、スプリンターには相対的なテーパリング効果が小さいと予想される
・ストレングスとパワーに関連したスポーツにおける効果的なテーパリングの科学的ガイドラインは、トレーニング強度と頻度を維持またはわずかに減少させながら、非線形に漸進的にトレーニング量を2~3週間で40~60%減少させる(169,170,171)。陸上競技で成功している選手が採用している戦略は、多くにおいて研究結果と一致している(172)
・Charlie Francisが考案した10日間のテーパリングプログラムはかなり注目されている(13,14)。これは過去6~8週間のトレーニングが計画通りに行われていること(怪我や病気がないこと)を条件に、その年の最も重要な大会の10日前に最後の重要な高負荷のスプリントセッションを行い、その後は大会の8、6、4、2日前にイージーなスプリントトレーニング(速度95%で低量)を行うとしている(詳しい練習は本文中に)
・Stephen Francisは、主に大きな大会の前の最後の10日間でボリュームを30%減少させるという、少し異なるアプローチを主張している(10)。彼の指導した選手で最も成功したアサファ・パウエルは、6月だけでなく9月にも世界記録を達成しました。
・成功しているコーチは、生理学的、技術的、精神的な側面がテーパリングプロセスに統合されている、全体的な戦略を活用している(172)
・個別のアプローチはコーチングの議論と一致しており、すべてのアスリートが同じではなく、一人一人に合ったアプローチとなる


本文をしっかりと全部読むのが良いかなと思うところですが、機械翻訳のままだと一部が全く逆の説明になったりする点もあるので、おや?と思う点は自分でしっかりと確認されることをお勧めします。また、なるべく引用されている文献を読んだ方が良いだろうなと思ったので番号をそのまま記載しておりますので、そちらも実際に読んでみるのが良いと思います。大事な点としては男女差はある、子どもと大人では違うし、その中でも練習をどれくらい経験しているかでも異なるし、トレーニング刺激への反応は人それぞれである、ということですね。個人的に思うのが、ジャマイカなどが行っている芝生でのスプリント、テンポ走というのをもっと取り入れたらよいのでは、という点です。走ることでの筋肥大は坂ダッシュや階段ダッシュ、速いスピードで走ることやウエイトトレーニングによって実現されるという思い込みが強いかと思いますが、実際にはそれだけでも無いわけです。また、日本人が毛嫌いしてしまう走り込みという観点も大事かと思います。これは持久力を高めるためには~みたいなイメージが強くて、どうしても400mなどの長い距離でやってしまう点が問題かと思います。実際にはミトコンドリアの増加などが狙いとなるのであり、遅すぎるペースでやるよりは適度に速いペースで本数をこなすような走り込みが効果的であろうと考えられるわけで、80mくらいの芝生をたくさん走るといった練習もやってみると良いのでは、と思います。そうした環境があまりないのが問題であるという点も指摘されそうですが。これが正解とされている理論がかなり微妙と言われてしまうところですが、スプリントトレーニングを今一度しっかりと見直すためには、全部ちゃんと読んでおくことをお勧めする一本です。これを書いた人がいろいろと疑問を持っている、批判的な面があるので。

2021-08-07

2020東京オリンピック男子1500m決勝

1 Jakob INGEBRIGTSEN(NOR)3:28.32
14.1
27.8         13.7 27.8
42.0         14.2
56.2         14.2 28.4 56.2
1:10.5 14.3
1:24.3 13.8 28.1
1:38.2 13.9
1:52.0 13.8 27.7 55.8
2:06.1 14.1
2:20.0 13.9 28.0
2:33.9 13.9
2:47.5 13.6 27.5 55.5
3:01.2 13.7
3:14.7 13.5 27.2
3:28.4 13.7

2 Timothy CHERUIYOT(KEN)3:29.01
14.2
28.3         14.1 28.3
42.2         13.9
56.4         14.2 28.1 56.4
1:10.3 13.9
1:24.0 13.7 27.6
1:37.9 13.9
1:51.8 13.9 27.8 55.4
2:05.8 14.0
2:19.7 13.9 27.9
2:33.6 13.9
2:47.3 13.7 27.6 55.5
3:01.0 13.7
3:14.9 13.9 27.6
3:29.1 14.2

3 Josh KERR(GBR)3:29.05
13.8
28.7         14.9 28.7
42.9         14.2
57.3         14.4 28.6 57.3
1:11.3 14.0
1:25.3 14.0 28.0
1:39.2 13.9
1:53.2 14.0 27.9 55.9
2:07.2 14.0
2:21.3 14.1 28.1
2:34.9 13.6
2:48.4 13.5 27.1 55.2
3:01.9 13.5
3:15.4 13.5 27.0
3:29.1 13.7

4 Abel KIPSANG(KEN)3:29.56
13.8
28.7         14.9 28.7
43.2         14.5
57.1         13.9 28.4 57.1
1:11.0 13.9
1:24.7 13.7 27.6
1:38.6 13.9
1:52.7 14.1 28.0 55.6
2:06.8 14.1
2:20.9 14.1 28.2
2:34.8 13.9
2:48.2 13.4 27.3 55.5
3:01.7 13.5
3:15.3 13.6 27.1
3:29.6 14.3

5 Adel MECHAAL(ESP)3:30.77
14.4
28.7         14.3 28.7
43.0         14.3
57.4         14.4 28.7 57.4
1:11.6 14.2
1:25.6 14.0 28.2
1:39.4 13.8
1:53.4 14.0 27.8 56.0
2:07.5 14.1
2:21.5 14.0 28.1
2:35.2 13.7
2:48.7 13.5 27.2 55.3
3:02.5 13.8
3:16.4 13.9 27.7
3:30.8 14.4

6 Cole HOCKER(USA)3:31.40
14.0
28.8         14.8 28.8
43.0         14.2
57.4         14.4 28.6 57.4
1:11.8 14.4
1:25.8 14.0 28.4
1:39.6 13.8
1:53.8 14.2 28.0 56.4
2:08.0 14.2
2:22.5 14.5 28.7
2:36.6 14.1
2:50.3 13.7 27.8 56.5
3:04.0 13.7
3:17.5 13.5 27.2
3:31.4 13.9

7 Stewart MCSWEYN(AUS)3:31.91
14.2
28.3         14.1 28.3
42.4         14.1
56.6         14.2 28.3 56.6
1:10.7 14.1
1:24.5 13.8 27.9
1:38.4 13.9
1:52.3 13.9 27.8 55.7
2:06.3 14.0
2:20.2 13.9 27.9
2:34.3 14.1
2:48.4 14.1 28.2 56.1
3:02.8 14.4
3:17.2 14.4 28.8
3:32.0 14.8

8 Michał ROZMYS(POL)3:32.67
13.8
28.2         14.4 28.2
42.3         14.1
56.5         14.2 28.3 56.5
1:10.9 14.4
1:25.2 14.3 28.7
1:39.1 13.9
1:53.2 14.1 28.0 56.7
2:07.8 14.6
2:22.3 14.5 29.1
2:36.4 14.1
2:50.0 13.6 27.7 56.8
3:04.0 14.0
3:18.1 14.1 28.1
3:32.7 14.6

2021-08-05

2020東京オリンピック男子1500m準決勝

準決勝1組
1 Jake WIGHTMAN(GBR)3:33.48 SB
13.2
27.0         13.8 27.0
41.7         14.7
56.5         14.8 29.5 56.5
1:11.5 15.0
1:26.6 15.1 30.1
1:42.0 15.4
1:56.8 14.8 30.2 1:00.3
2:11.5 14.7
2:26.2 14.7 29.4
2:40.8 14.6
2:54.6 13.8 28.4 0:57.8
3:08.0 13.4
3:20.6 12.6 26.0
3:33.5 12.9

2 Cole HOCKER(USA)3:33.87 PB
13.5
27.6         14.1 27.6
42.3         14.7
57.1         14.8 29.5 57.1
1:12.1 15.0
1:27.2 15.1 30.1
1:42.4 15.2
1:57.4 15.0 30.2 1:00.3
2:12.3 14.9
2:27.0 14.7 29.6
2:41.0 14.0
2:54.7 13.7 27.7 0:57.3
3:08.0 13.3
3:20.9 12.9 26.2
3:33.9 13.0

3 Timothy CHERUIYOT(KEN)03:33.95
13.0
26.5         13.5 26.5
41.3         14.8
56.1         14.8 29.6 56.1
1:11.2 15.1
1:26.3 15.1 30.2
1:41.6 15.3
1:56.4 14.8 30.1 1:00.3
2:11.3 14.9
2:25.9 14.6 29.5
2:40.4 14.5
2:54.1 13.7 28.2 0:57.7
3:07.9 13.8
3:20.8 12.9 26.7
3:34.0 13.2

4 Oliver HOARE(AUS)03:34.35
13.5
27.5         14.0 27.5
41.9         14.4
56.6         14.7 29.1 56.6
1:11.7 15.1
1:26.7 15.0 30.1
1:42.0 15.3
1:57.0 15.0 30.3 1:00.4
2:11.8 14.8
2:26.5 14.7 29.5
2:40.6 14.1
2:54.4 13.8 27.9 0:57.4
3:08.3 13.9
3:21.3 13.0 26.9
3:34.4 13.1

5 Ignacio FONTES(ESP) 3:34.49
13.1
26.8 13.7 26.8
41.6 14.8
56.3 14.7 29.5 56.3
1:11.4 15.1
1:26.5 15.1 30.2
1:41.8 15.3
1:56.7 14.9 30.2 1:00.4
2:11.4 14.7
2:26.0 14.6 29.3
2:40.6 14.6
2:54.3 13.7 28.3 0:57.6
3:08.1 13.8
3:21.2 13.1 26.9
3:34.5 13.3

準決勝2組